素材:アトリエ夏夢色様
近くで見ると本当に仁王くんの髪の毛は見事なまでに真っ白だった はある意味感動すら覚えていた 「仁王とは中学の時からクラスも部活も同じなんだぜ」 「え?…部活って?」 「へへっ、聞いて驚けよ。オレ達は常勝立海テニス部のレギュラーだったんだぜィ」 マジ?テニスって結構ハードなスポーツだと思うんだけど…仁王くんもテニスをやってたの? 最後の青春を謳歌してたってことなのかしら? 「に、仁王くん?」 「うん?」 「クラス委員引き受けちゃったけど大丈夫なの?無理しなくていいよ」 クラス委員なんてやりたくないけど、どこか気だるそうに見える仁王くんが心配で 自分が頑張ろうとは決意した だが、その時仁王が不敵に笑ったのをはまだ気付いていなかった SEASONS〜Spring〜 #002:クラス委員として。 「おーいクラス委員、先生が職員室に来いってさ」 クラスメイトに声を掛けられは面倒くさいと思いながら重い腰を上げた 仁王くんも一緒に行った方がいいのかと窓側の一番後ろの席に目を向けると、 彼は机に突っ伏して眠っているように見えたのでは声を掛けずに一人教室を出た やっぱりクラス委員をやるのは無理なんじゃないかなぁ… そんな心配をしていると後ろから名前を呼ばれ、振り向くとそこに仁王くんが立っていた 「どうしたの?仁王くん」 「先生に呼ばれてるんじゃろ?俺も行くぜよ」 「私一人でも大丈夫だよ」 「遠慮しなさんな。俺もクラス委員みたいじゃからな」 いや…遠慮って言うかさ 無理して倒れられたりしたら正直困るって言うか… すっごい気を使うんですけど… 職員室までの道のりで仁王くんがいろいろ喋っていたみたいだけど私はずっと上の空だった 職員室の前で一呼吸置いてノックする そしてドアを開けると担任が笑いながら手招きをしていた 「用事って何ですか?」 「栄光あるクラス委員第1号に選ばれたお前達に初仕事を与えてやろうと思ってな」 「何が栄光あるなんですか?だいたい選ばれた覚えはありません。」 「おいおい、はキツイなぁ…嫁さんにしたら尻に敷かれそうだな」 「先生知ってます?そういうのもセクハラになるんですよ」 「そうなのか?仁王もそう思うよな?」 このクソ教師!くだらねぇこと言ってんじゃねぇ!! 「で、用事って?」とが強い口調で言うと、教師は「おーこわっ!」と両手を上げて 大げさに怖がるフリをして机の上にあるA4サイズのプリントを数枚まとめてに渡した 「何ですか?コレ…」 「それでクラス名簿を作成してくれ」 「はい?…それって先生の仕事じゃないんですか?」 「あ?俺?あははは…無理無理。そんなの面倒くさいし疲れるだろ?」 「それを生徒にやらそうというわけ?」 「昔から言うだろ?近くに居るものは親でも使えってな」 「わかりました。その代わり後でちゃんと報酬を頂きますからね」 その時のの中で完全に仁王の存在は消えており、 頭にきた勢いで無造作にプリントを奪い取るように受け取った 「あ、今日中に頼むな」 いつか絶対張り倒してやる! そう心に誓いながらはズンズンと物凄い勢いで教室に戻った 今日は入学式の翌日という事もあって授業がなく、教室に戻ると誰も残っていなかった 誰も居ない教室でなんでこんな内職みたいな作業をしなくちゃいけないのだろうと が大きな溜息を吐くと「どっこいしょ」と隣のブン太の席に仁王くんが腰を下ろした あっ、仁王くんが居たんだっけ… ちらりと隣を窺うように見ると、仁王くんは気だるそうに頬杖をついていた やっぱり体とか疲れやすいのかな?このままここに残ってもらうのも気が引けるよね 先に帰ってもらった方がいいのかな? そんな事を考えていたら、「俺の顔に何かついてるか?」と訊かれるまで ずっと仁王くんを見ていた事に気付いていなかった 「え?あ…いや…髪の毛がすごい真っ白だなと思って…」 …って、私 何を言ってるの?絶対失礼なこと言っちゃったよ 後悔の念にかられていると仁王くんは「薬の副作用でな…」とポツリと言った 「そ、そうなんだ……か、髪の毛とか…抜けなかったの?」 もう失礼千万なのはわかっていたが、口から出ちゃったものは仕方ない 答えにくかったら答えないだろうと半ば自分の事を正当化していたら 「幸いな事にな」と答えてくれた は返す言葉がなくなってしまい、不自然に見えるくらいわざとらしく 机の上のプリントに目を移した すると仁王くんは「かったるい」と呟くといきなり咳き込み始めた 「ちょ、ちょっと大丈夫?」 まさか吐血とかしないよね? 「ねぇ、名簿は私が作るから帰っていいよ」 「心配せんでもいいぜよ」 「いや…そうは言っても…」 「じゃ、少し休ませてもらってもいいか?」 「うん、いいよ」 「悪いな」 いやいや、悪くないです。 無理をして万が一吐血でもされたら面倒見きれませんから。 は仁王が机に突っ伏すのを見届けると名簿作成に取り掛かった よし、早いとこ終わらせよう。 そして、仁王くんにもさっさと帰ってもらおう。 はグッと拳を握ると、クラス35名分の名簿を丁寧に仕上げていった BACK TOP NEXT |