素材:アトリエ夏夢色様
ゴムみたいに伸びるらしいぜ そうそう、まるで人間離れしているヤツだ 一人は海賊狩りだって言うぜ 野獣だ!! 単なる噂話じゃなかったのか… #003:連帯感 マズイ、霧が出てきた。 シオンのやつ、姑息な術を使いやがって… 「なんだ?霧…か?」 「ちょっとアンタ!本気でやりな!!油断してるとやられるわよ」 「ちっ、うるせー女だ」 男と交わした言葉はそれだけだった。 その時、シオンの姿が消えた。そして一瞬にして男の前に現れ剣を振り翳す。 瞬く間の攻撃に男が数歩後ずさるとシオンの瞳が紅く光り、その口元には不敵な笑みが浮かんでいた 瞬間、の足は動いていた は走りながら風を起こす。それはゆっくりと霧を晴らしていく 男の所まで走って行くとその肩を支点にして身体を大きく浮かせた。 そして、着地と同時に二本の短剣を抜き地面に這わせながら弧を描いた 「シオン、その手には乗らない」 「、お前…」 「絶対帰らないってオヤジに言っときな」 ざわざわと足元の木の葉が静かに浮き上がっていく。 そして、舞い上がる木の葉にポツポツと小さな炎が燃え上がった それは男達にとって好機だった 「おーい、伏せろ!」 背後でゴムの男が叫ぶ。 反射的にが膝を折ってその場に屈むと、男の振り上げた刀によって強い風圧が掛かった それは小さな竜巻のようだった。男の起こした風圧によって炎を纏った木の葉がシオンを襲った 目の前で渦を巻く風に巻き込まれないように伏せているに耳にシオンの悲鳴が響く その時と男は腕を掴まれ、みるみる後方へ引き寄せられていった 振り返るその先に、シオンが倒れているのが見えた 「助けてくれてありがとう。行きましょう」 「行くって何処にだ?」 「とりあえずアタシんち。ついて来て。」 は先頭を切って走り出す。 シオンは決して弱いヤツではない。むしろ里では一番の使い手だ。 アタシ一人ではせいぜい戦っても互角だった。 どう表現したらいいだろう… 動きの一つ一つに無駄がなくてお互いに次の攻撃に繋がっていく。 作戦を立てた訳でも話し合った訳でもない。仕掛ける前の微妙な変化が伝わって自然に動く体。 ずっと一緒に戦ってきたような連帯感。 戦いの最中なのに、どこかで楽しいと思った。 そう、シャンクスと戦った時みたいに… ********** 「お前…名前は?」 「…。アンタ達は?」 「オレはルフィ。海賊だ。そんでこっちがゾロ」 なけなしの金で買い揃えた食料を遠慮なしに頬張るルフィとゾロ。 彼らの食欲はまさに人間離れしていた いつの間にか、さっきまでシオンと戦っていた事も忘れ、も彼らと一緒になって騒いでいた 比べものにもならないが、こんなに楽しいと思える食事はシャンクスの船に乗って以来だ はほんの一時の仲間気分を味わっていた すると、不意にゾロの視線を感じた 「なに?アタシに見惚れてんの?」 「アホかっ!」 ゾロはしらけた表情で舌打ちをすると、酒瓶をテーブルにドンと置いた 何だよコイツ。ちょっと冗談を言っただけなのに…と、 は目の前の肉を鷲掴みにすると口いっぱいに頬張った すると、ゾロは不意な言葉を口にした 「お前……鴉か?」 「ブ―――ッ」 別に自分が鴉の末裔だって事を隠しているわけじゃないし、隠すつもりもないけど あえて口にする事もないと思っていた。それが何故コイツの口から聞くの? あまりの事に口の中の物が飛び出して、その行く先の事なんか考えていなかった 「テ、テメェ…」 「あ…悪い。…で、鴉がなんだって?」 眉を吊り上げ、こめかみをヒクヒクと痙攣させるゾロの顔をその辺の布で拭ってやると 彼はその手を払い、重く深い溜息を吐いた 「なんでねーよ……噂で聞いたことがあるだけだ」 噂? 噂ってなんだろう… 自慢じゃないが噂になる様な行動を起こした覚えもない。 まして、アンタ達みたいに人間離れしているわけでもないし… 気になったがゾロと鴉の話はそれきりする事はなかった それからアタシ達は他愛もない話を繰り返しながら深夜まで騒いだ シャンクスの思い出話からルフィが自分の会いたかったヤツだって事も分かり、 また、海賊狩りと呼ばれるまでのゾロの遍歴など話は尽きなかった その中で、芽生えつつある妙な連帯感。 それは戦った時と似ているとはどこかで感じていた ただ、海賊王になるというルフィの夢。世界一の剣豪になるというゾロの夢。 それは、自由に生きたいと願うには眩しくも思えるほどの夢だと思った 彼らの夢に比べたら自分の願いなど小さく陳腐なものにしか見えない それでもシャンクスと約束した。 自分の力に誇りを持つ事を。それだけが今のの心の支えだったのだ やがて、ルフィとゾロの大きな寝息が聞こえ始め、 そして夜が明ける頃、は出発の準備を整えていた BACK TOP NEXT |