素材:アトリエ夏夢色様
大海原 揺らめく波 それぞれの願いを乗せた小さな船は、遥か彼方の水平線を見つめていた 何でこんな事になったんだろう それはルフィの一言だった 『一緒にシャンクスに会いに行こう』 #004:彼方へ 「ん?お前どっかに行くのか?」 目が覚めたルフィが大きな欠伸を一つしてに問い掛ける。 口にはしなかったが、シオン達に見つかってしまった以上ここに居る事は出来ない それをどうこう理由付けする気にもならず、ここでルフィ達とも別れようと思っていた だから、ルフィの問いかけにも「まあね」とだけ簡単に答える事しかしなかった 「アイツらの所為か?」 誰がどう見てもそう思うだろう しかし、元を辿ればアタシが里を飛び出した所為なのだ が「アイツらは関係ない」と、それだけ呟くように吐き出すと ルフィはそれ以上の詮索をする事もなく「そっか」と笑顔を向けた その瞳がシャンクスに似ていてはほんの少し胸が痛んだ 「んじゃ、オレたちも行くか」 ルフィの言葉にゾロも重い腰を持ち上げた 短い間だったが、心の中で過ごした家に別れを告げ、足を踏み出した しかし、進むべき道の前にまたしても災難が降りかかるのだった 「あ――っ!!」 悲鳴に近い声。ルフィの指さす方に目を向けると、そこには波打ち際に浮かぶ船の残骸が。 しまった。やられた。 アタシをこの島から出さない為のシオンの仕業に違いない は怒りを抑えるように強く拳を握り締めた フン、こんな事は想定内よ。 「ルフィ、代わりの船ならあるから安心して!」 「お、ホントか!?」 「ちょっと待ってて」 は大きく頷くと、ここからそう遠くない一軒の小屋へ急いだ もし、ここもやられていたら万事休すだ。 不安な面持ちで小屋の扉を大きく開くと、何事も無かったように船は留まっていた 「よし、これは無事だったみたいね」 船の周りを点検しながらは胸を撫で下ろした そして、確認が終わると壁に掛かっていた太いロープを手に取り船の舳先に巻き付けた ********** 「おい……アイツ…女だったよな?」 「何言ってんだ?女にしか見えねーぞ」 「その女が何で片手で軽々しく船を引き摺ってるんだ?」 「知らね」 ルフィとゾロがそんな会話をしているとは知る由もないは鼻歌交じりに船を運んでいた そして、彼らの前まで船を移動させて来ると軽くフーッと息を吐いて「お待たせ」と笑った 「お前…どんだけの力なんだよ?」 「あら、それほどでも」 「何を照れてやがる。俺は別に褒めてねーぞ」 呆れるゾロ。だが、ルフィは「スゲェ」を連発しながら大きな声で笑っていた 「小さいけど、この船をアンタ達にあげる」 「うひょ、いいのか?」 「うん。アンタ達の船を壊されたのはアタシの所為だと思うから」 「お前はどうすんだ?」 「う〜ん…何とかなるよ。きっと。」 そう、きっと何とかなる。これはシャンクスの船で学んだ事。 自分で選択した事はどんなに困難でも何とかなるものだと。自分の力を信じればいい。それだけ。 二人を送り出したら自分も改めて進み出そうと思っていた しかし、ルフィはも一緒に行くように誘ったのだった それはどこか期待通りというのか、シャンクスと同じ瞳を持つルフィなら きっとそう言うのだろうと分かっていたのかもしれない だけど、あの時と同じように身を任せてもいいのかは戸惑った しかしそれは杞憂だと直ぐに気付いた 「シャンクスと約束したんだろ?」 そう、約束した。 仲間を作り、自分の力に誇りを持つ事。 それはいつか大きなアタシの力となるとシャンクスは言った。 鴉の血に誇りを持てた時、アタシはシャンクスに会いに行く 遠い海の果てでいつまでも待っていると言ったシャンクスに会いに… 「オレもシャンクスと約束した。だから一緒に会いに行こう」 「本気で言ってる?アタシと一緒に居ると何があるか分かんないわよ?」 「何もないよりあった方が面白ぇ。それに、お前が一番面白いしな」 アタシの何が面白いのかと訊くと、どうやら彼はアタシの使う術に興味があるらしい。 魔法使いみたいな術を沢山見たいと、嬉しそうに瞳を輝かせて笑った 魔法使いねぇ… それも悪くないかとが溜息を吐きながら苦笑していると、 「俺もお前に少し興味がある」と口の端を上げてニヤリと笑った 「やだ、アタシに惚れちゃった?」 脇に差してある刀に手を掛け、鋭い目つきで睨むゾロに溜息を吐きながら コイツには冗談が通じないとは本気で思った 「よーし、出航だ〜〜!!」 出逢うべくして出会った仲間。別れも突然やって来るかもしれない それでも立ち止まらず進んでいきたい。 遠い、遥か彼方の水平線を目指して新たなる出会いを求めて… あの日の海賊達の温かい手のように、風がの背中を押した BACK TOP NEXT |