素材:Abundant Shine様
…お前は何があっても俺が護ってやるから… 真田幸村…必ず決着はつけてやる 小十郎…悪りぃな 天下は盗れそうもねぇな これは夢…か? なに俺は女々しい事を言ってやがるんだ? 遠い夢の中で俺はいくつもの重なる夢を見ていた ここではない何処かで 7 ん? アイツは何処にいった? ほどなくして、目覚めた政宗はがいないことに気付く 「っ」 部屋はもちろん階下にもの姿はなく気配もない 朝を迎えない日々に多少の苛立ちを感じながらも 政宗もまた、向けた窓の外の異様な光景に気づいた 「何だあれは…」 が見たものと同じものを見て、あの場所は上田城だと直ぐに理解できる はあそこに行ったのか? その時、政宗の懐の中の携帯がブルブルッと軽く振動した 政宗は慌てて携帯を取り出すが、手にした携帯は何の反応も示さなかった 気のせいか? そういやぁ、これは繋がらねぇって言ってたよな だが、なんなんだ? 広がる不安が政宗を襲う 「Shit!」 小さく吐き捨てるように叫ぶと、急いで家を飛び出した 「うわっ!」 迫る突風と、押し潰されるような重力 この中をは行ったというのか… 「くそっ…この伊達政宗をなめんじゃねぇ!!」 あのバカ… 一人で勝手に消えるんじゃねぇぞ その頃、は上田城を前にして動けないでいた 見えない壁が立ちはだかっているように上田城に入る事ができない それに加え、押し潰されるような重力に立ち上がれない なんなのよ これって私は入るなって拒絶されてるの? あっ… まただ… 体が沈んでいくような感じ… かろうじて、這い蹲っている地面が沈んでいない事が確認できる 痛い…重い… 無理矢理地面に抑え付けられるような感覚 骨が鈍い音をたてて軋む様だ… いやだ…このまま消えたくない 私…まだ政宗にお別れを言ってないよ こんな時に何を言ってるんだろう… 政宗――っ! 声にならない声で政宗の名を叫んだ時… 私は夢を見ているのだと思った 「っ!」 私の視界に飛び込んできたのは、身体中蒼い光に包まれている紛れもなく政宗の姿 「ま…政宗…?」 突風と重力の掛かる中、駆け寄ってくる政宗の姿を見つけた時、 『正義の味方』に見えちゃったよ 「大丈夫か?」 「あまり大丈夫じゃない…みたい」 「動けるか?」 「…無理みたい……身体が沈んでいくの」 「沈んじゃいねぇ」 「……政宗は…この感覚が感じないの?」 「身体が重くて素早くは動けねぇがな」 政宗は動けない私の体をズルズルと引きずっていく 「い、痛い……骨が折れそう」 「死ぬよりマシだろーが…骨が折れるくらい我慢しろ」 「…そんな…殺生な…」 …って…え?……今、死ぬよりマシって言った? これって死んでしまうような状況になっているの? ふぅん…そうなんだ… こんな状況で、痛くて…重くて… 死んだ方がラクになれるんじゃない? もう考えるのも面倒だし… いっそ死んでしまえば…いいんじゃない? その時、頬に痛みが走って……政宗に頬を抓られている事に気付いた 「お前……今、死ぬ事を考えやがったな」 「…考えて…な……」 「黙れ!そんな暇があったら動くんだな」 「…だ、だって……」 「うるせぇ、死ぬんだったら卵焼き作ってから死にやがれ」 「た…卵焼き…?何言ってんの?」 「俺はもう一度お前の卵焼きが食いてぇ」 こんな時にまで冗談を…? フフッ…そうだね 私…何があっても政宗を護るって… どんな事があっても政宗を元の世界に戻すって誓ったんだよね ここで死んでいる場合じゃないね 政宗に引きずられるように、私も渾身の力を振り絞って身体を動かし、 やっとの思いで石塀の陰に身を寄せると全身の力が抜けていくようだった 「おい、生きてるか?」 「…なんとか」 「ったく、無茶しやがって」 「…ごめん」 政宗に包まれている身体は、もう沈んでいく感覚も消えていた 「暫くここから動けそうもねぇな」 「…そうだね……それよりどうしてここが判ったの?」 「こいつが教えてくれた」 政宗は懐から携帯を出して、「やっぱりこれは俺とお前を繋いでいるみてぇだ」と笑った 「身体は痛くねぇか?」 「少し…」 先刻より、風はかなり緩やかになってきている 心なしか身体にかかる重力も軽くなってきている気がする なんだったのだろう… もしかしたら…ここが…? 安堵感からから突然襲ってくる睡魔に思考能力が削られていく 「…政宗……眠い…」 4度目のキスはを深い眠りに誘った BACK TOP NEXT |