素材:十五夜様
あいつら…、伊東を薄汚ねぇ裏切り者のまんま死なせたくねぇんだよ 最後は武士として…仲間として死なせてやりてぇんだよ 絆 20 銀さん、どうして分かるんです? 真選組ではないあなたが分かるのに兄には分からなかったんですね 皮肉なものです。 もっと早くに気付いていれば少しは変わっていたのでしょうか? 列車を降りると真選組の人たちが兄を取り囲んでいた 兄はその中でただその時を待っているように動かずにいた 「私が…」 せめて兄の罪を自分の手でとが刀に手を掛けた時、土方がそれを止め 「これは俺の仕事だ」とを退けた 土方さんのそういうところ…やっぱり兄さんと似てる きっと二人ともそんな事言ったら「似てねぇ」って怒るよね? は土方の背中に鴨太郎の背中を重ねていた 土方は煙草を銜えたまま輪の中に入って行くと倒れている鴨太郎の前に刀を投げた 「立て伊東…決着つけようじゃねぇか」 アイツが呼んでいる みんなが呼んでいる 『立てるわ…兄さんは強いんだもの』 そうだな… 立ち上がってアイツを殺らなければならない フッ… 今の僕にはそんな力は残っていない 違う…な たとえ僕に力が残っていてもアイツだけは倒せないだろう やっと見つけた…、やっと気付いた“縁”という名の“絆” 「伊東ォォォ!!」 が…、アイツが…、皆が僕の立ちあがるのを待っている 僕が今、君達に応えられる事はただ一つ… 皆との絆を手に僕は逝こう もう怖くはないから… 鴨太郎は震えるその足に最後の力を加えゆっくりと立ち上がる そして、二度と呼ぶ事のないその名を叫ぶ 「土方ァァァ!!」 それはシネマの1シーンのようで、長い時間が経ったのかほんの一瞬だったのか にはその時間差が感じられなかった 『、ずっとそのままでいなさい』 その瞬間、は鴨太郎の最期の言葉を聞いた気がした 長い長い間、ずっと一人ぼっちだった空っぽの心が満たされたように 「ありがとう」の言葉を遺し鴨太郎は真選組に見守られながら逝った きっと明日になったら全てが元に戻っている 近藤さんが笑っている その傍らに兄さんと土方さんが無言の圧力を掛け合いながら座っていて、それを茶化す総悟くん。 フフッ、そんな光景を山崎さんといつもハラハラしながら笑ってたよね? 明日になったら… 目の前で横たわる兄の姿を見ながらは“夢”だと信じながら茫然と立ち竦んでいた BACK TOP NEXT |