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「そんなアンタだからこそ命張って護る甲斐があるのさぁ」 遺言めいた言葉を残し、総悟は近藤の乗っている車両の連結部を外した 絆 13 「すまねぇ総悟…こんな事になったのは俺一人の所為だ」 避難させた車両で近藤は謝罪の言葉を口にする だが、総悟の欲しいものは謝罪の言葉ではない 総悟は近藤の言葉を聞かずに扉を閉めて車両に閉じ込めた 「総悟!?何をやっている 開けろ!!」 近藤が止めるのも聞かずに総悟は扉越しに背中を向けたまま言葉を残す 「大将の首をとられたら戦は負けだ ここは引き下がっておくんなせぇ」と。 しかし、近藤も黙っては引き下がらない 「ふざけるな!そっちの車両にはちゃんだっているんだぞ」 「何言ってるんだ!?アイツは伊東の妹ですぜ…俺達にとっては敵だ」 「違う、違うぞ総悟……ちゃんは……ちゃんにもしもの事があったら…トシが…」 「何でアンタはそんなに人がいいんだ?…近藤さん…何度も言ったでしょ? それがアンタの悪いとこだって…」 誰でも信じて疑おうとしない 挙句あの伊東まで抱え込んでしまった 遅かれ早かれいつかはこんな事になると思っていた だけどな… そんなアンタだから俺達は集まった そんなアンタだから一緒に戦ってきた 「そんなアンタだからこそ命張って戦う甲斐があるのさぁ」 総悟は最後の言葉を残し、連結部を外す 遠くなっていく車両に向かって近藤は声が嗄れるまで叫ぶ事しかできなかった 「総悟ォォーー!お前やちゃんに死なれたら俺は…俺はァァーーー」 「沖田君、君はもっと利口な男だと思っていたが…我々全員を一人で片づけるつもりか?」 「……」 総悟くんがいるの? 鴨太郎の声を聞きながらは痛みに耐えようやく立ち上がった 隊士達と鴨太郎の背中に阻まれて姿は見えないが、その向こうに総悟がいるのが分かった 「うぅっ…」 背中が痛い この状態で戦う事が出来るだろうか… だが、後ろにが立っているのを鴨太郎は気付いているのかどうか分からないが 兄の言葉は総悟を捉えていた 「近藤を逃がし一人敵陣に残り討ち死にする事で悲壮美に浸ろうと言うのかね? だが残念だったな…近藤は僕の計画通り死ぬ」 近藤さんを逃がした? 総悟くんが一人残った? そっか…近藤さん無事なんだね……良かった ホッと胸を撫で下ろすの安心感もほんの一瞬だった 「この戦場にいるのは僕達だけではない」と鴨太郎は横目で車窓の外へ目を移した 「…鬼兵隊か」 え!? 鬼兵隊!? が窓の外に目を向けると、 そこにはバイクに乗り列車と並行に走っている河上万斎の姿があった 瞬間、万斎に斬られた肩の傷がキリキリと痛む様だった 「フン、ワリーね伊東さん…実は俺も一人じゃねぇ」 総悟の言葉に鴨太郎たちは慌てて外を見ると、半壊したパトカーの上に乗り いつものように煙草を吹かす土方の姿があった 土方さん… 銀さん… が、土方がまだトッシーのままであることはは気付いていない ただ、そこに土方がいるということで覚悟が揺るぎないものになっていった その時、総悟が突然の名を呼んだ 「!お前は何だ?」 突然の問いに答えられずにいると、再び総悟は叫ぶ 「お前は何だ?って聞いているんだ」 何だ?って言われてもには理解出来なかった 私は何? 総悟くんの言葉の意味する事って… その時総悟は、多分にしか気付かなかったであろう いつも皮肉を言う時の、それでいてどこか意味のあるそんな笑みを浮かべた 総悟くん…? いいの? それって私と一緒に戦ってくれるってことだよね? 「っ!!」 「私……私は…真選組の伊東です!」 答えをもらった訳ではない しかし、は咄嗟にそう叫んでいた 「そうか…、お前は兄であるこの僕ではなく近藤につくと言うのだな?」 「真選組は私のかけがえのない家族なんです。命に代えても必ず護ります!」 「残念だよ…僕としては妹のお前に手荒な真似はしたくないんだが…」 間合いを取りながら走る緊張感に車内は静まり返り、息を呑む静かな呼吸音と 外での攻防戦の凄まじさの音と未だ列車の中で爆発を繰り返している音だけが響く 「フン、土方め…今更来たところで何が出来る……近藤もろとも全員潰してくれる」 「消えるのはテメェらだ…見知った顔も見えるが伊東派についたからには 死ぬ覚悟はできてるんだろうな?」 「たった二人で何ができる?お前達はもう終わったんだよ」 「…局中法度第21条を言ってみな 真選組なら知らないとは言わせないぜ」 「はい、局中法度第21条 敵と内通せし者これを罰する」 「正解!テメェら全員俺達が粛清する」 当たり前のように総悟はニヤリと笑う ありがとう総悟くん 例え今だけでもいい 私は今この瞬間、真選組として戦います BACK TOP NEXT |