素材:clef様
「お前は本当に世間知らず過ぎるぜ」 「それならはいっぱい勉強します」 「いや…お前はそのままでいい」 いつだったか、もし私がお嫁にいけなかったら… その時は俺がもらってやるよって笑って言ってったっけ でも、もうその必要はないのだと… 『はきっと幸せになります』 それだけを銀さんに伝えたい… 大人には大人の事情ってぇもんがある 2 「あの…ここって万事屋さんでしたよね?」 自分の事情を話したは、気を取り直して確認するかのように訊ねた 新八が戸惑いながら「あ…はい、そうです」と答えると 「だったら…依頼してもいいでしょうか?」とは真っ直ぐに新八を見つめる 「依頼って…あなたの知っている銀さんを探せってこと…ですか?」 さんと銀さんが知り合いだということはハッキリしている 銀さんはこうなることが分かっていて嘘をついてまで出て行ったんだ それって彼女の依頼を受けていいって事なんだよね? 「だめでしょうか?」 の申し出に新八は決意したのだった 例えそれが銀さんにとって不本意な事であっても 僕はこの依頼を受けて彼女に銀さんを合わせてあげたい…と 「一つ聞いてもいいですか?」 「はい?」 「あなたと銀さん…いえ…坂田銀時さんはどういう関係ですか?」 「はい…結婚の約束をしていました」 「け、け、け、け、結婚――――っ!?」 瞬間、神楽はコリコリと食べていた酢コンブをつまらせ咽る ちょっと待って、結婚って何? えーと、つまり結婚っていうのは…男と女が… 一つ屋根の下であ〜んな事やこ〜んな事をしちゃって… いいの?そんな展開になっちゃっていいの〜〜!? っていうことは何? 銀さんは結婚がしたくないから逃げちゃってるとか…? それって…結婚詐欺とかいうやつですかーーーっ!? 怒りを隠せない新八の様子がに伝わったのか、は笑いながらそれを否定した 「コホコホ、新八…銀ちゃん結婚するアルか」 「ちょっと神楽ちゃんそうじゃないって…」 「おい新八、銀ちゃんはあたいというものがありながら…ひどいアル」 「だから、そうじゃないってば!」 神楽は涙目になって「銀ちゃんの裏切り者」だとか、 女優も真っ青なくらいの演技をしながらヨヨヨと泣き崩れる真似をする 「もう、神楽ちゃんは黙ってて…話が分からなくなっちゃうでしょ」 「なんだよ新八、ノリが悪いなお前…これだからメガネは…ブツブツ」 「おいっ、メガネは関係ないだろっ!!」 「あの…」 「あ…すみません」 あーぁ、こうやってすぐに話が横道に逸れちゃうのって 絶対銀さんの影響だよなぁ もしかして、ここは万事屋なのにこんなんだから依頼がこないんじゃないのかと 新八は自分の事は棚上げ状態でそう思ったのだった しかし、今は自分が銀さんのいないこの万事屋を預かっている身として 気を取り直し「で、さんは銀さんに会ってどうするつもりですか?」と訊ねた 「実は…」 はゆっくりと銀さんとの出会いや経緯を話してくれた ダーーーッ!(涙) 僕は今、猛烈に感動している 彼女の話を聞いて、僕はなんとかしてあげたいと本気で思った 「その依頼、この『万事屋新ちゃん』の志村新八が受けましょう」 「いいんですか?」 「はい、任せてください」 「おい新八、いいのかよ。そんな安請け合いしちゃってよ…って、 銀ちゃんならそう言うアルね」 「何言ってるんだよ、神楽ちゃんだってこのままじゃダメだって思うだろ?」 「フッ…仕方ねぇアル。この『万事屋神楽ちゃん』に任せるアル」 「ひゅ〜、カッコイイよ神楽ちゃん♪」 よしよし、これで神楽ちゃんはOKだ あとは、肝心の銀さんなんだよね でも…銀さんは当人だし、 咄嗟に名前を誤魔化したんだから簡単にはOKしないか… いや、銀さんはわざと出て行ったに違いないんだから 僕と神楽ちゃんに任せたってことだよね まず、銀さんが遥さんの探している本当の『銀さん』なんだって 僕の口から言う訳にはいかない 銀さんが自分で名乗らなきゃ意味がないんだ あの人が素直に名乗るとは思えないけど、 さんの為にも銀さんを説得しようと新八は固く心にそう誓った 一方その頃、部屋を出て行った銀時は階下の『お登勢』にいた 「ここはツケは利かないよ、金を払ってくれるんだろうね」 「ちょっとちょっと、銀さんは気前がいいでしょ お金を払いたくなるような酒があれば喜んで払いますよ」 「フン、勝手なことぬかすんじゃないよっ」とキツイ言葉とは裏腹に カウンターにコップ酒がドンと置かれた その時、銀時の隣に座っていた男が「なるほど」と口を挟んできた 「何がなるほどなんだい?」 「この酒は金を払えるほどの酒ではないな…なら俺もツケで…」 「お前は払わんかいっっ!!このボケがっ!」 アホな事を言ってお登勢に頭をガツンと殴られるロン毛の男… 「ヅラ…アンタここで何してるのっ!?っていうか何でここにいる訳っ?」 「ヅラではない桂だ」 「そんなことどーでもいいでしょーがっ!アンタはヅラ…ヅラなんだからさっ」 「貴様っ!ヅラではない、桂だっと言っているだろう」 『ヅラだ』『桂だ』と言い合う銀時と桂の前で またしてもお登勢の目がギラリと光り二人の頭上にでっかい雷が落ちる 「アンタら二人とも金は払ってもらうからねっ」 「オ登勢サン、コイツラニハ水デモ飲マセトケバイインデスヨ」 「上手いこと言うじゃないかキャサリン」 「なんだと、この化け猫がっ!おい銀時、俺の武勇伝言ったげて」 「ヅラ…それって……」 流石にそれは某コメディアンのパクリじゃん ここではマズイでしょーがっ!! 『檻円樽羅次緒』のお二人さん、ごめんなさいっっ!!m(_ _)m 冗談なやりとりがフッと消え、銀時と桂の間に沈黙が流れ そして、その沈黙を破ったのは銀時だった 「で…、ヅラ、お前がここにいるって事は…?」 「ヅラではない桂だ。…言うまでもないさんの事だ」 銀時は目の前の酒を一息に飲み乾すと大きく溜息をついた は俺たちにとって共通の知人だ 恩になった人の大切な一人娘 マドンナ的存在で、世間知らずで天然っぷりな彼女にいつしか惹かれていた こんな時代でなかったら、もっと違う出逢い方をしていたらと 思わずにはいられなかった そんな思いを桂たちも察していたのだった 「さんが来ているのだろう?」 「だから?」 「坂本から文が来たのでな」 「ちっ、あのバカが…」 「銀時…お前はどうするつもりなんだ?」 「どうもこうも…俺には関係ない」 「銀時っ!」 銀時は遠い昔を懐かしむような瞳を見せたが 直ぐに「俺はもうあの時の坂田銀時じゃねぇんだよ」とポツリと呟いた 「それはどういう意味だ?」 「俺はの探している銀時じゃねぇ…今はしがない万事屋の坂田銀八さ」 「坂田銀八…?」 恐らく新八には意味が分からないだろう だが、共に戦ってきた桂には銀時の心と思いが伝わってくる これが大人の事情ってものかどうかは定かではないが、 銀時と桂は黙ったまま酒を酌み交わすのだった BACK TOP NEXT 2007/06/14 |