素材 Abundant Shine 様
月明かりを浴びながらは湯浴みをしていた。いわゆる露天風呂である。 「気持ちいい」と手足を伸ばしながら硬くなった筋肉を解していた。 不覚にもちょっとした政宗の優しさに気付きときめいてしまった事。 いかん、いかん、あんな見せかけの優しさに騙されるもんかと は少し熱くなった頬に水を掛けて首を横に振った 婆娑羅5 〜小十郎よ、お前もか!?〜 は負けず嫌いの性格だ。元来負けず嫌いな者は影の努力を惜しまない。 「ふふん、どんなもんよ」と自画自賛できるほどには乗馬レベルが上がっていった その腕前は政宗や小十郎を唸らせるほどのものになっていたのだ だが、その喜びも束の間、次なる試練がを待っていた いきなり目の前に差し出された一本の竹刀。 これが何を意味するのか嫌でも解るというものだ あははは、馬の次は剣ってか? 確かに剣の一つでも振るう事が出来なければ戦では通用しない事くらい解ります。 だけど、私は生まれてこのかた剣なんて握った事ありません。 こんな事なら剣道でも習っておけば良かったよ〜 「やっぱりやらなくちゃダメ?」 「死にたいんだったら無理強いはしないぜ」 憎ったらしい… 男だったら『お前は何もしなくていい、俺が守ってやる』くらいは言って欲しいもんよねぇ 恨めしげに政宗を睨みながら溜息を吐いていると、すかさず小十郎が口を挟む 「無理強いはしないが自分を守れるくらいにはなった方がいい」 まあね、小十郎がそう言うんだったらって思うけど、政宗に剣を習うのはやっぱり怖いよ だって、アイツ鬼教官だからね。今度はどんな仕打ちを受けるかと思うと溜息だって出ちゃう。 すると、小十郎が「俺がみてやろう」と名乗りを上げてくれた え?マジですか? 優しい小十郎に教わるなら、きっと親切丁寧に教えてくれるだろうとは胸を撫で下ろした まずは竹刀を握ってみろと促され、は「お願いします」と頭を下げた 「構えてみろ」 「はいっ」 なんて返事はしたものの構えろと言われてもねぇ とりあえず両手で竹刀を握って構えてみたけれど格好がつかない 心なしか政宗と小十郎の目がバカにして見えるのは気のせいでしょうか? ともあれ生きて自分の世界に帰る為、戦国の世を生き抜くため、 せめて自分の命くらいは自分で守るくらいの勢いで頑張らないと。 「構えたか?」 「は、は、はいぃっ!!」 剣の鍛錬はどんなものか不安はあったけど、優しい小十郎の事だし親切丁寧に教えてくれる筈。 手取り足取り…な〜んちゃってね などと暢気に妄想していたら手の甲に激痛が走った 「いった〜〜い」 あまりの痛さに思わず竹刀を落してしまったの耳に信じられない言葉が降りかかる 「おい、やる気はあるんだろうな?」 低い声が骨を伝って響いてくる 政宗? ったく、すぐこれだよ。人が痛い思いをしているって言うのに もっと優しい言葉を掛ける事はできないもんかねぇ が手の甲を摩りながら顔を上げると、そこには鬼のような形相の小十郎が竹刀を構えていた うっ…、今のって… 政宗じゃなくて小十郎? 心なしか眉がいつもより吊り上って見えるのは気のせいでしょうか? 「竹刀も握れねぇようじゃ話になんねぇな」 は?竹刀も握れないって… アンタが思いっきり叩き落としたんでしょーが! 女の子の手を竹刀で叩くなんてどうかと思うけど? っていうか、小十郎の話し方が違ってません? 「どうした?やめるか?」 やめるかって…アンタ そりゃあ出来る事ならやめたいですよ。でもその目はやめさせないって言ってるようにしか見えない 横目でちらりと政宗を垣間見れば「お前にはできねぇよ」みたいな顔をして不敵な笑みを浮かべてるし 小十郎まで眉は吊り上っているものの、口角は上がっている あーぁ、小十郎よお前もか? フン、やってやろうじゃん!! 鼻息も荒くはグッと竹刀を握り、小十郎を見据えて構えるのだった BACK TOP NEXT |