素材:Abundant Shine様
おいおいおいーーーっ!!案山子の次は鬼武者!? 私は夢を見ているのでしょうか? 記憶が確かなら私は学校から家に帰る途中だったはず。 だけどあまりにもリアル過ぎて夢とは思えないんですけど… もしかしたら、あの狭い路地に進入してきた車に轢かれて私は死んでしまったのでしょうか? それなら… この方は地獄への道先案内人? 婆娑羅2 〜思考回路崩壊寸前〜 そうか…私死んじゃったんだ …って、ちょっと待ってよ 私の行き先が地獄だっていうの? なんで? そりゃあ素行がいいとは言えないかもしれないけど、 地獄に落とされるほど悪い事をした覚えもないんですが… いやーーーっ!!降ろして下さい 降ろせ 降ろしやがれーーーーーーっ!!! 不規則に揺れる馬の背でがバタバタと暴れ出すと、後ろに乗っている男が 「少し大人しくしてろ」と低い声で凄んだ そして次の瞬間、男の手が腰に回されてきた。自慢じゃないけど生まれてこのかた、 腰に手を回された事なんてないのよとは全身にゾワッと鳥肌が立つのを覚えた 「ぎゃあ〜〜〜〜!!」 張り裂けんばかりの悲鳴を上げると、腰に回された右手に力が込められたのを感じた そして、男が左手で握っている手綱を引くと馬は小高い崖の上からダイブした 「ふんぎゃあーーーっ!!」 下腹部が突き上げられるようなモゾモゾとした感覚… ジェットコースターより怖いんですけどぉおおおーーーー 恐怖で涙と鼻水が同時に出てきて、は接着剤でくっつけたようにしっかりと目を閉じた 身体にどすんと衝撃を受け馬が地面に着地したのが分かりゆっくりと目を開けると 既に馬から降りていた男が馬上のを見上げていた 目深に被っている兜で顔は良く見えないが、男はを抱きかかえるように馬から降ろした 地獄の門に到着してしまったのだとはある程度の覚悟をしながらも 馬がダイブした崖を何気に見上げると思っていた以上の高さに今更ながら膝が震え出した すると男の口角が少し上がり、それはまるでバカにしたような笑いに見えて の恐怖は怒りに代替されていった 「アンタねぇ…馬が可哀想だと思わないの?」 違う、こんな事が言いたいんじゃないのに… そう思っても流れる言葉は止まる事が出来ずに、 気が付けばは男の胸座を力一杯握り締めていた 「馬が可哀想?」 「そうよ!人間二人を乗せてあんな高いところから飛び降りさせて… この馬の脚は骨折してるかもしれないじゃない?」 瞬間、この場の空気が冷やかに流れ静寂が訪れた しかし直ぐに「ぷっ」という吐き出された音が聞こえたかと思うと 男は大きな声で笑い出したのだった 「何笑ってんのよ」 「…いや、馬の心配よりテメェの心配をしたらどうだ?」 「私の?」 私の心配って…? 自分が死んでしまったと思っているは今更何の心配をするのだろうと唖然としていると 男はいきなりを抱えて木陰に座らせた 「足を見せてみろ」 「足?」 何でいきなり足を見せなくちゃなんないんだ? 地獄にも“足フェチ”とかいるのか? などと、くだらない事を考えながら自分の足元を見ると靴を履いていない事に気付いた いつの間に靴が脱げてしまったのだろう するといきなり靴下を脱がされ、むき出しにされた自分の足を見ては驚いた なんと足首が赤く腫れ上がっていたのだ 「甲冑を着た足軽の脇腹を思いっきり蹴るからだ」と男はそう言ってフッと小さく笑った 甲冑?足軽?……脇腹、蹴る それらの単語を繋ぎ合わせてはハッとするのだった あれって案山子じゃなくて足軽だったんだ… そういえば、あの格好…教科書で見た事がある気がする そんな事をボーっと考えていたら足に冷たいものを感じ、自分の足に目を向けると 男が何やら黒っぽい薬草みたいなものをの足首に塗り白い布を巻いてくれた 「応急処置だ、帰ったら手当してやる」 「あ…ありがとう」 「ほう、礼は言えるみたいだな」 なんだとーっ!! 私だって親切にされたら礼くらい言えるっちゅうねん!! がプイッと顔を横に向けると男は無理矢理自分の方へ向かせ、 声のトーンを下げてに訊いてきた 「手当をしてやったんだ、お前の素姓を聞かせてもらおうか」 「素性?…素性って言われても…」 「どこの忍びだ?」 「し、忍び!?……いや、そんなカッコイイもんじゃ…私はただの高校生だし…」 「こーこーせー!?」 あれ?なんで“高校生”に疑問符を浮かべるんだ? 高校生を知らないなんていつの時代の人間だよアンタ… 「まぁいい……で、名前は?」 「…だけど……アンタは?」 「俺か?俺は……」 男はそう言って被っている兜に手を掛けた その瞬間、は首の取れた足軽の光景が目の前に浮かび蒼ざめた まさか、兜を脱いだら首がないってこと…ないよね? しかし兜を脱いだ男の顔を見て、別の意味では全身が固まった 「俺は奥州筆頭、伊達政宗 you see?」 「あ、あ、あ、あ、あい…しー」 だ、伊達政宗って……あの独眼竜とかいうやつだよね!? ね? ねっ? 驚きだよ。伊達政宗って東北の人だから方言で喋ると思ってたのに標準語だし、 しかも、言葉の一部を英語にするどこかのタレントみたいな話し方してるし… いやはや突っ込みどころ満載って言うか…… に…しても、こんな超スペシャルなイケメンだったとは… マジで鼻血が出そうなんですけど… 完全にフィルターが掛かり、思考回路崩壊寸前のの頬が緩んだ頃、 「どうやら少し頭が弱いようだな」と政宗に軽く頭を叩かれは我に返った 「イケメンだと思って何でも許されると思うなよ」 がキッと睨みつけると、政宗は「上等だ」と何故だか楽しそうに笑っていた その後、は政宗の屋敷に連れて帰られ手当てを受けたのだった BACK TOP NEXT |