素材:アトリエ夏夢色














「赤也ぁあああーーっ!!」




今日は待ちに待った俺の誕生日。
計画はバッチリ!…だったはずなんだけどなぁ…




朝練が終わって教室に入るとがものすごい勢いで突進してきた




「オッス、なんだよ俺に会いたかった?」




冗談半分本気半分で言ったら、いきなりビンタを食らった










あなたが望むなら 後編










「授業が始まるっすよ」

「やかましい!授業なんてどうでもいいわよ」




顔を真っ赤にして怒っているに引きずられるように屋上まで来た




「なに怒ってるんだよ」

「アンタ…テニス部の先輩に何を言ったのよ」

「何って…俺、なんか言ったかなぁ」

「とぼけるんじゃないわよっ!」

「…あれ?……もしかしてアレのことかな?…別にいいじゃん」




の言いたいことは分かってる…怒ってる理由もね
俺が先輩たちにとキスしたいって言ったからだろ?


まあ、こういう時は笑ってごまかすに限る




ちっとも悪びれずニッコリ笑う赤也に、はすっかり脱力してしまった




「はぁ…」

「そんなため息なんてつかなくてもいいじゃん」




は赤也をキッと睨んだ




「今度先輩たちに余計なことを言ったら、そのワカメヘアをストレートにしてやるんだから…」




まったくなんつーことを…俺は相談しただけだっつーの


だけど…先輩たちもむかつくよなぁ
何も本人に言わなくてもいいじゃんか…



さて、こっからどうすっかなぁ…
今日が俺の誕生日だってこと絶対忘れてるよなぁ










それから二人は口も聞かずに遅れて教室に戻った




「二人で仲良く遅れてくるとはいい度胸だな」




ぎくり




そうだった…授業始まってたんだっけ……




「それじゃ、仲良く廊下に立っててもらおうか?」

「え!?」




クラス中が廊下コールで溢れた




おい、クラスメイトじゃねぇのかよ




そうは思ったもののクラスメイト全員の「廊下!廊下!」のシュプレヒコールには敵わず
赤也とは諦めて廊下に出ることにした






「もう…赤也のせいだからね」

「いいじゃん、二人っきりになれたし」

「そういう問題じゃない」




赤也は軽くため息をつくと拗ねたように廊下に座り込んだ




さ…今日なんの日か忘れてるだろ?」

「…忘れてない…よ……赤也の誕生日…だもん」

「だったらプレゼントくれよ」

「…やだ」

「なんでだよ」

「赤也が……キスに拘ってるから」

「いいじゃん、したいんだから」

「……なんで?…なんでキスに拘るの?」




がさ…俺の夢に出てきて、キスしてって言ったから…」
と、赤也は顔を少し赤く染めてそう言った


すると、は「そんな勝手な」と呟くと赤也と同じようにそこへ座り込んだ




「本当はさ…ちょっと悔しかったから」

「え?」

「お前さ…俺とのキスは考えられないっつったじゃん
 なんかさ、俺ばっかりが好きみたいでさ…すっげぇムカついた」

「そ、それは…」




はどういうふうに赤也に説明したらいいだろうと考えていたが、
旨い言葉が見つからずに口ごもってしまった




「ちゃんと言えよ」




赤也はじれったさをおぼえて少し強い口調で言った




「あのね…」

「うん」

「私は赤也が大好きだよ…だから…赤也が望むことは何でもしてあげたいって思うよ
 …だからって……キスって宣言してするものじゃないし…」

「ふぅん」

「それから…赤也とキスするのを考えられないって言ったのは…
 …えーと……その…想像できないっていうか…」




俺は必死で説明するが可笑しくて、思わず吹き出しちまった




「そんじゃ、想像できないんだったら本当にしてみるしかないっしょ?」

「え!?」




俺はが抵抗する間もなくキスしたんだ






本当はさ、これでも俺なりにキスのイメトレとかもしちゃったりして…


俺の部屋で…とか、いろんなシチュエーションを考えたりもしたんだけど
懸命に説明するの唇を見てたら、あの『キスして』の甘い声が甦ってきて
思考が全部ぶっ飛んだ




経緯はどうであれ俺の計画はうまくいったッス






「なに目を開けてるんだよ、瞑れよ」

「だ、だって…」

「いいから瞑れって」

「…う、うん」






の唇は想像以上に柔らかくて…気持ちよくて…


やべぇ…って思った時、いきなり教室のドアが勢いよく開いた




「コラーーッ!お前ら廊下で何しとるかーーっ!!」




「ひっ!」

「げっ!、逃げるぞ」

「え、えぇええ〜っ!ちょ、ちょっと〜………先生ごめんなさ〜い!」




俺はの手を掴むと一目散にその場から逃げた










「ここなら安全っしょ」と、俺はを連れて部室へ逃げ込んだ






「なあ…もう一回キスしよ」

「え!?……えーと…」

「今日は俺の誕生日なんだし…今度はからしろよ」

「そ、そんな……しろよって言われても…」




躊躇っているの両手をとると、俺の首に回させ
そして、俺はの腰に手を回すとそのまま引き寄せた


すると、なにやら柔らかいものが俺の胸に当たってるし…




さっきより密着度100% そして…衝撃度MAX



俺の鼓動との鼓動がミックスされてもう爆発寸前




「は、早くキスしろって」

「……」

「俺が望むこと何でもしてくれるって言ったっしょ?」

「…う、うん」




は躊躇してたけど、それでも俺が望んだからしてくれたんだ…と、思う
触れるだけの優しいキスだったけど俺は爆死しそうだった




「もう俺とのキス…考えられるっしょ?」

「う、うん」










「やれやれ、どうやら上手くいったみたいだね」




もう一度キスをしようと唇を近づけた時、突然幸村部長の声がして俺たちは慌てて離れた




「神聖な部室で何をしとるかっ!」

「げっ…さ、真田副部長まで何でいるんすか…」

「だから場所を考えろって言ったろぃ」

「ここでキ、キ、キスをするとは…こ、このたわけがっ!」

「弦一郎…君が赤くなってどうするんだい?」

「う、うむ…」






「あは…ははは」……って、笑ってる場合じゃないッス




なんでみんないるんすか?これじゃ、続きどころじゃないじゃん




もう、後で地獄の特訓でもなんでもやるッス…だから今は逃げるッスよ








俺はまたの手をしっかり掴むとそのまま走り出した




「ちょ、ちょっと赤也…今度はどこに行くの?」

「そんなの二人っきりになれるところに決まってるっしょ」

「えっ!?」








へへっ、今日は俺の誕生日



俺の望むことをいっぱいしてもらうからな







まず、はじめに……















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2006/09/09