素材:clef






俺の奢りだ、ほら食えよ土方スペシャルだ



トシ…




って、食えるかーーっ!!










趣味は同じより異なる方がいい










は毎度の事ながら深い溜息を吐く



彼はいわゆるマヨラーである。
マヨラーなだけにマヨネーズをこよなく愛している



人にはそれぞれ趣味や好物があるのだから文句を言うつもりはない



“土方スペシャル”と称したマヨネーズをたっぷりかけたご飯を
目の前で美味しそうに食べていても許せるだけの寛大さは持っていたつもりだ




だけど、だけどね、
何も食後に飲むコーヒーの中にもマヨネーズを入れなくてもいいと思うの






「ちょっとトシ、コーヒーにマヨネーズなんて入れてどうすんのよ」

「あ?洒落てるだろ?」

「は?何?何が洒落てるの?」

「これぞウィンナ・コーヒーだ」

「……」




バカだ…トシは絶対バカだ
百歩譲ったとして、見た目だけは似ていると言ってあげてもいい


だけど、ウィンナ・コーヒーはマヨネーズじゃなくて生クリームだろうがっ!






「お前も入れるか?」

「入れねぇよっ」




はガックリと肩を落とし、自分に問い掛ける




、どうしてトシを好きになったの?』と…




さすがに『もうトシってばオ・チャ・メさん』なんて言えない






ダメよ




ほら思い出すのよ、出会った時のあのトキメキを…
『愛』さえあれば、こんな些細な事くらい乗り切れるわ



こんな事を自分に言い聞かせている自分が空しい
これが俗に言う『倦怠期』というものなのかしら?






「急に黙り込んでどうした?」

「別に…」

「ふぅん」




『ふぅん』じゃねぇよ
あぁ、つまんない。家に帰ってゲームでもしたい






「ねぇトシ…もう帰らない?」

「何だ?帰りたいのか?」

「…うん」




久しぶりのデートなのに帰りたいなんて悪かったかな?なんて
少し申し訳なさそうにトシの顔色を窺った

しかし何故かトシは照れたような、妙な笑いを浮かべていた







「何をニヤニヤしているのよ、気持ち悪いんだけど…」

「いや、お前も好きだなと思って…」

「何が?」




ゲームがしたくて帰りたいと思っている事がばれたのかと一瞬ドキリとしたが
トシの考えている事が別の事だと知りは再び肩を落とす






「そういやぁ、随分としてなかったもんな」

「だから、何の事よ」

「照れる事ないだろ?」

「いや、照れてないし…」

「しょうがねぇなぁ、じゃあ精力でもつけるためにもう一杯土方スペシャルだな」

「なにーっ!?精力ですと?」






うわわ…、コイツ何か誤解しているじゃありませんか!?




しかも土方スペシャルで精力をつける気だよ

お前、そんなの食ったら逆に萎えるんじゃねぇか?




って、そんな事どうでもいいのよーー
私はエッチがしたいんじゃなくてゲームがしたいのよ〜〜






「精力なんてつけてどうする気よ」

「そりゃあもう…今夜の楽しみだな」

「げーーっ、やめてよ」

「またまた、お前って結構お茶目なヤツだな」






ギャーッ!寒いよ、イタイ、イタイってばよ〜〜

絶対トシの細胞はマヨネーズで出来ているとしか思えない



総悟くんでも呼んでその脳天にバズーカをぶっ放してもらおうかと本気で思った






「と、とにかく帰るから」

「はいはい」




だから、そういう返事はしないでよ
まるで私がおねだりをしているみたいじゃないのよ



好きな人とのデートでこんなに疲れるなんて…




は席を立つと足早に店を出た










ダッシュで一目散に家に戻ると、は脇目も振らずにテレビに直行する



やっぱりこれよ、コレ…『戦国ボサラ』




なんたって伊達政宗の声が素敵なのよねぇ〜〜♪




はコントローラーを手にすると、隣にいるトシの存在さえ忘れ
ゲームの世界に浸りきった






「ハァ、癒される」

「また戦国ボサラかよ」




トシはゲームのパッケージを見て呆れたように軽く舌打ちをしたが
そんなものは無視。






「いやん、政宗さん素敵」

「どこが素敵なんだ?」

「顔、声…っていうか全部。奥州筆頭っていう肩書きもいいよねぇ」

「俺も真選組副長という肩書きがあるぞ」

「あ、そうだったね」

「なぁ、この伊達政宗の声…俺に似てないか?」

「うぅん、全然似てない」

「……」

「ね、ね、トシ、このWAR DANCEって技をトシもやってみてよ」

「やってどうするんだよ」

「笑うから」

「笑うのかよっ」




ゲームをしながら横からちょっかいを出すトシを相手に至福の時。








ねぇ、トシ…思い出したよ


どうしてトシを好きになったのか






お互い趣味も好物も違うけど、言いたい事を言い合える
どんな時でも自分を作らなくていい


そんな関係が一番私たちを繋いでいるのかもしれない




飾らない私を受け入れてくれるトシだから好きになった
きっとトシも同じ事を思っていると信じたい






「んじゃ、押して参る」




トシはそう言って、コントローラーを取り上げると優しく抱きしめてくる






「だから政宗には似てないって…しかも字が違うってば」




ま、意味はあっていますけどね…










「なんかさぁ、体の中にマヨネーズが入った気がする」

「萎えるような言い方するな」

「マヨネーズみたいな子供ができたらどうする?」

「マヨネーズみたいな子供ってどういうのだよ」






呆れたように笑ったが「案外かわいいかもしれない」と煙草を吹かしながら
ポツリと呟いたトシを見ていたら、それも有りかなと思った








でも、きっと二人の趣味と好物は同じになる事はないだろうけど…ね















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マヨネーズみたいな子…
それはきっとキューピーさんのようにカワイイ子供でしょうね(笑)

2009/02/14 管理人