素材 Abundant Shine 様
近頃アイツのことが気になっている 中学生とは思えない風貌、時代錯誤的な言動 テニスの技量に伴う責任感…そのくせ天然的なボケをかます愛すべきキャラ 真田弦一郎 テニス部副部長 武士は喰わねど高楊枝? 「真田君…疲れない?」 突然話しかけたマネージャーのに明らかに怪訝そうな顔を向けた 「そんな眉間に皺をよせて睨まないでよ」 「お前がくだらんことを聞くからだ」 「くだらんてなによ…疲れない?って聞いただけじゃない」 真田はくるっと背を向け、水まきを始めた 「ちょっと、そんなことは私がやるから」 「かまわん」 「かまわんじゃなくて…それは私の仕事だから…」 「気にするな」 「気にするわよ!…真田君って私の存在をわかってる?」 「マネージャーだろう?わかっているぞ」 淡々とした喋り方をしながらホースを離す事もなく水まきを続ける 「なんでそうやって人の仕事までとるのよ」 「とっている訳ではない、こういうのは手の空いたものがやればいいだろう」 「真田君は他にやることがあるでしょう?」 「お前もやることがあるだろう?洗濯の途中ではないのか?」 え?…真田君…? もしかして私の仕事を助けてくれてるの?あははは……まさか…ねぇ? 「真田副部長なに遊んでるんすか〜?」 「おいおい赤也、ジャマしたらいかんぜよ」 その瞬間真田の動きがピタッと止まった 「切原君も仁王君も何言って…」 が言いかけると柳までがなにやら勘違いをしている様子 「うむ…弦一郎…そうだったのか…俺のデータも修正しなくてはならんな…」 「おや、どうやら真田君は照れているようですね」 「真田が照れてるぅ〜!?それは気持ち悪いだろぃ」 うわっ、なんでコイツらはこういう言い方をするんだよ〜 そんな事言ったらまた真田君が… はおそるおそる真田を見るとホースを持つ手がプルプルと震えている ヤ、ヤバイ…これは怒ってますよ 「きっ、きっ、貴様らぁああああーーっ!」 案の定真田は大声を出して怒鳴った 「ちょ、ちょっと真田君…お、落ち着いてよ」 は真田を抑えようと彼の持っているホースを掴んだ 「離せっ!あいつら許せん!」 「許せんって…たいしたことないじゃない」 「何を言う…お前まで愚弄されたんだぞ」 (愚弄って…されてないし…) 「武士の風上にもおけんっ!」 (アンタ武士じゃないだろーが…) 「えーい離せっ!」 「ちょ、ちょっと……きゃあ〜〜っ」 必死で抑えようとしたが、その時真田の持っていたホースがに向けられ、 は頭から水をかぶってしまった 「つめた〜い!何すんのよ〜」 「うっ…す、すまん」 「びしょびしょじゃない」 「謝っているではないか」 「謝ればいいってもんじゃないわよ」 本当はたいして怒っていないだったが、 申し訳なさそうな真田の姿に愛しさを感じ、はわざとヒートアップしていった 「武士なら切腹…いいえ、討ち首ね」 「それは大袈裟ではないか?」 「いいえ、市中引きまわしの上張り付けの刑でもいいわ」 の言葉にタジタジの真田を見て、 「いいぞ〜ちゃん」「やれやれ〜!」と、周りから野次が飛んだ 「真田君、これは責任をとらなければいけませんね」 「それより…先輩いいんすか?」 「なにが?」 なにやら切原君が私を見てニヤニヤ笑ってるけど…なに? 「わざとやったんだろぃ」 「ファイヤー!」 丸井君やジャッカル君までなんなの? 「真田…お前、わざとに水かけたんじゃろ?厭らしいのぅ」 仁王の言葉に真田の顔がみるみる赤くなっていって、今にも湯気を噴きそうだ いったいなんだって言うのよ… その時、真田がいきなりの腕を掴んだ 「、来るんだっ」 「えっ!?」 真田はの腕を掴んだままズンズンと歩き出し、部室の前まで来ると、 「早く入るんだ」とを押し込むように部室へ入れた 「ちょっと、なんなのよ」 の問いに返事もせず、ロッカーを開けジャージを取り出すとに投げた 「なにこれ?」 「いいから早くそれに着替えろ」 「なんだ…お詫びってわけ?それならそんな怖い顔しなくてもいいじゃない」 「そ、そうではない…そ、その…し、下着が……す、透けて…」 「えっ!?」 が自分の胸元を見ると、体操服が水に濡れて肌に張り付き下着が透けて見えていた あいつら〜、それでニヤニヤしてたのか くっそ〜、タダで見やがって…後で金をとるか? なんて事を考えていると、に背中を向けて、 大きな身体をまるで小さくするように立っている真田の姿が目に入った …っていうか、真田君…なんでそこで後ろ向いて立ってるの? 耳が真っ赤だよ…着替えさせたいならここから出て行けばいいのに… ふふふ… の頭上にピンと電球マークが浮かんだ 「真田君…見たでしょ?」 「見ていない」 「うそっ、見たわよね?ううん、絶対見た!」 「み、見てなどおらん!」 真田が否定しようとの方へ向きを変えた瞬間、は体操服を勢いよく脱いだ 「ば、ば、ばっかも〜〜〜〜ん!な、何をしているっ」 真田は下着一枚になってしまったに慌てて、また背を向けた 「何って…着替えるんですけど…」 「じょ、女子が男子の前で着替えるとは何事だ……み、見えるであろう…」 ぷぷっ、出て行かないでそこにいるアンタが言っても説得力ないって… 「だってぇ…見せてるんだも〜ん♪」 「見せてるんだも〜ん♪…ではない……は、破廉恥極まりない」 「…破廉恥ねぇ」 は、背中を向け、顔を隠すようにキャップを目深に被り耳まで真っ赤にしている真田の 背後に近づき、その背中に抱きつくと真田の身体が硬直したのがわかった 「うわっ」 せ、せ、背中が胸に…もとい…胸が…胸が背中に… の胸が俺の背中にくっついている た、た、……たまらん… 「ふふふ…真田君どうしたの?」 が甘えるような声で訊くと、真田は何かブツブツと呟いていた 何を言っているのだろうとがそっと耳を澄ましていると、 「ぶ、武士は食わねど高楊枝…」と、まるでお経のように唱えていた やせがまんしちゃって♪とは笑いたくなるのを必死で抑えた 「……た、頼むから離れてくれ」 たまらなくなった真田は懇願するようにに言った 「ふふっ、正直に言ったら離れてあげる」 「な、何をだ?」 「見たでしょ?」 「み、見ていないと言っているではないかっ」 「ふぅうん…」 は抱きついているその手に力を入れ、ぎゅっと強く抱きついた すると、胸は更に背中に押し付けられる 「うきゅっ」と真田の口から思わずたまらん声が洩れた 「正直に言わないともっと抱きついちゃうからね」 可笑しさに耐えながらが言うと、ついに真田は白状した 「み、み、見た…」 それを聞いた瞬間堪えていた可笑しさが込み上げてきては笑った 「それじゃあ許してあげる」と、抱きついていた手を離すと、 真田は安堵したようにふぅと大きく肩で息をした そして、真田のジャージを素肌に羽織ると「真田君の匂いがする」と言って笑った それを聞いた真田は、また真っ赤な顔をしてキャップを深く被りなおすと 咳払いを一つして「行くぞ」と部室を出て行った その時、両手と両足を同時に出して歩いていた姿は、 普段の真田からは見られない冷静さを失っている姿だった その後、コートに戻った真田は皆からいろいろ言われたことに違いないだろう やっぱり真田君は気になる存在なんだよなぁ 今度は『スキ』って告白してみようかな? そしたら真田君はどんな顔をする? その時は『武士は食わねど高楊枝』なんて…やせ我慢しないで…ねっ! BACK |