素材:clef様
ほら、アイツが駆け寄ってくる とびきりの笑顔を向けて… こんな時俺は帰ってきたのだと思う HOME 「おかえり〜!」 子供のようにバタバタと足音をさせては駆け寄ってくる そして、俺に抱きついて耳元で言うんだ「政宗、おかえりっ!」てな まるで父親が帰って来て喜ぶ娘のように 飛び込んで抱きついてくるを抱きしめながら『帰ったぜ』と俺は答える 別に死を恐れているわけではないが、 の笑顔を見れば生きていて良かったと思ってしまう がそこにいれば帰ってきたと俺は思う 最近では小十郎もそれを承知しているのか、戦いの最中に俺が無謀な事をすれば 『様を泣かせるおつもりか』と言う始末だ 「どこも怪我はない?」 「あるわけねぇだろ」 俺に怪我がないことを確認すると、 決まって小十郎に「お疲れ様でした」と言って微笑みかける まったくどういう意味だ そして、今度は家臣たちに「皆も怪我してない?」と気遣いを見せる 「大丈夫でさぁ」 「怪我なんかしたら逆に筆頭に殺されちまうぜ」 「違いねぇ」 Shit!どいつもこいつも… これじゃ俺は天下もとれねぇよな 俺がそう言いながら苦笑すると、 「天下を取っても誰もいなかったら意味がないじゃない」とは必ずそう言う そして、「だから、誰も死んじゃダメなんだよ」と付け加える の夢は【皆仲良く暮らすこと】 そんな甘っちょろい考えでは天下を取るどころか、この時代を生き抜くことさえ難儀だ でも、そんな甘っちょろい考えは嫌いじゃねぇ 父がそうだった様に俺も戦のない世界にしたいと思う 「お腹すいたでしょう?ご飯出来ているからね」 一斉に歓喜の声が上がる 戦の間中は碌なものも腹に収めることは出来ない こうして帰ってくると温かい飯にありつける 誰もが先を争って膳の前に座る ここでは飯の時は主従関係もなく皆平等だ ご飯は皆で食べた方が美味しいからと、そんな慣わしを作ったのもだった 確かに、こうして顔を合わせて飯を食うと、 家臣たちの顔色を見ることも、意見を聞くこともできる なにより他愛もない会話が一番心が安らぐことを知った 「あっ、筆頭の卵焼きだけ一切れ多いですぜ」 「うふふ、ごめんね〜、政宗の分が一切れ多いのは私の愛情なの」 「ぐっ…そりゃあ贔屓ってもんだぜ」 かっ…かわいいっ!! 今すぐその頭をくしゃくしゃに撫でて、思いっきり抱きしめたい衝動を抑えるが 自然に頬が緩んで情けない顔になってしまう 「筆頭、鼻の下伸びてますぜ」 「Hun、妬くんじゃねぇ」 「このキンピラ最高だぜ〜」 「当たり前だ、それはこの小十郎が大切に育てた牛蒡と人参なのだ」 「ちっ、の味付けが上手いんだよ」 「何を仰いますか政宗様っ」 「ふふっ、素材がいいから美味しく出来るんですよ」 「おぉ、さすがは様、よう分かっていらっしゃいますな」 「何を言ってやがる」 「おや?政宗様は妬いておられるのですか?」 まったく小十郎まで調子に乗りやがって… だが、こうしてほんのひと時戦のことを忘れて 和気藹々と過ごせるのものお陰なのだろう 幼い頃、母にこの命を奪われそうになり、父をこの手にかけてしまった俺にとって 成し得る事の出来なかった家族というものなんだと教えてもらった この血の繋がりも何もない者たちが今の俺のFamilyなのだと… 俺たちはこれから何度も『ただいま』と『おかえり』を繰り返していくのだろう 俺がいて、小十郎がいて、皆がいて、そして、…お前がいる 天下を取ったその先は、そんなものは見えねぇと思っていたが 今はハッキリと見えるぜ 天下のその先… 皆仲良く、そして楽しく平和に暮らすこと お前の笑う声が…微笑む顔が… 俺には見えるぜ 俺がいて、小十郎がいて、皆がいて お前がいる場所 そこが俺のHOMEだ BACK
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