素材:clef様
どうしたんだ俺は…心の臓が激しく動く クラクラと眩暈もする 俺は病を患ったのか?…いや、そんなことはねぇ が傍にいるからか? そう言えばが近くに寄ると俺の鼓動は早くなる…気がする なぜだ!?……もしや、これが『恋の病』というやつなのか? そんなはずはねぇ…俺が女でドキドキする訳がねぇんだ……そうだろ? 添い寝 「政宗様、お顔の色が…」 小十郎の言葉に政宗はどきりとしたのでございます 「わ、悪いのか?」 「いえ…赤いですぞ、如何なされました?」 「赤い?」 その言葉に兵たちは一斉に政宗に視線を注いだのでございます 「筆頭〜、また何か如何わしい事でも考えてるんじゃ…」 「様が傍にいるからなぁ」 兵たちは口々に政宗の普段の素行の悪さを指摘するのでした まったく政宗様は普段からやんちゃ過ぎるから兵たちにまで斯様な事を言われて…と 小十郎は思ったのですが、それも致し方ないと…項垂れたのです ちっ、言いたい放題だな 政宗はムッと腹を立てましたが、何故か今日は力が入らないのです どうなっちまってるんだ俺の身体?…………意識が遠のく… 「うゎあ〜〜、政宗様が倒れた〜〜!!」 「ま、政宗さまっ!」 は脱兎の如く政宗に駆け寄ると、自分の膝の上に政宗の頭を乗せ、 そして、政宗の額に手を当てると如何せん熱がある事に気づいたのでございます 「みんなっ、早く政宗様に床の用意をしてっ!」 「イエッサー!」 「小十郎様、政宗様を運んでくださいませ」 「かしこまった」 はてきぱきと皆に指示を出したのでございます それに驚いたのは小十郎を初め家臣たちでした 「おぉ…あの様が指示を出しているぞ」 うむ…いつもそのようにしていらっしゃれば政宗様のお気持ちも分かってもらえるのでは? 互いに思い合っているのに通じ合わない二人の姿をいつも小十郎はその目で見ていたからです 如何せん、様は色恋沙汰には無知すぎるお方… 常々小十郎は頭を抱えていたのです 万が一、政宗様と様がそのような事になればあの政宗様の事… 間違いなく兵たちの前でもいちゃいちゃするはず…それでは兵たちに示しがつかぬ 政宗とが上手くいって欲しいという気持ちと、万が一を考えると小十郎は複雑な思いでした 「小十郎様っ!如何なされたのです?早く政宗様を」 「はっ」 の指示で小十郎や兵たちは急いで床の支度を整え政宗を寝かせたのです その頃はお台所で桶の中に氷を砕いて水を張り、手拭いを用意して政宗の所に急いだのでした ここはどこだ?…え、花畑だと? ま、まさか……ここは…噂に聞くあの世とかいう所なのか? 近くに三途リバーがあるんじゃねぇだろうな? 俺は死んだと言うのか? Oh my God!…なんてこった!!俺はまだ天下を取ってねぇ それどころかも食ってねぇ 死んでる場合じゃないんじゃねぇか? 幼少の頃よりやんちゃで風邪ひとつ引いたことのない政宗が今こうして床に臥している姿は 小十郎にとっても見慣れない光景で、政宗自身にとっても初めてのことでした そんな状況の中で政宗はこのような夢を見たのかもしれません 「様〜、筆頭は死んだりしませんよね?」 「勿論です。が死なせはしません」 「おぉおおおーーーっ!!」 の強く熱い言葉に兵たちは歓声をあげたのでした これぞまさしく政宗様に相応しいお方 普段のを知っている小十郎や兵たちから感嘆の声があがっても不思議ではありませんでした 小十郎や兵たちが見守る中は手拭いを氷水に浸し、政宗の額に乗せたのです 何度も水を換え、氷を砕き、時には汗を拭き、水を飲ませ…それはそれは献身的でございました 「いいなぁ筆頭…俺も病になりてぇ」 「まさか政宗様、後であれは仮病だぜHan…とか言うんじゃねぇでしょうね?」 「あり得るぜ、政宗様お得意の策略っていうやつじゃ…」 家臣たちの洩らす本音に「たわけた事を」と言いながらも、少しだけ政宗が羨ましいと思う小十郎であった 「小十郎様、今夜は政宗様のお傍にいても宜しいでしょうか?」 政宗が病でなければ一夜を過ごさせるのは無謀な事だが、今は政宗は動けぬ状態と、 小十郎は「む、無論です」とに答えたのでした の「政宗様のお傍にいたい」という言葉に驚いた家臣たちも、小十郎の心を察し、納得したのでした 「……うぅ…」 「政宗様…苦しいですか?」 熱にうなされ声も出せない様子の政宗に、は自分の口に水を含み口移しで飲ませたのです 政宗も意識があればこの状況に対して「グッジョブ!」と叫んだかもしれません だが、不運にも意識のない政宗は、こんな美味しい事を逃してしまったのです 夢うつつの中で、何やら唇に触れる感触、それと同時に流れ込んでくるもので喉が潤う 政宗は無意識のうちにごくりと喉を上下させた 「…よかった……飲み込めたみたい」 は少し安堵したものの政宗の熱は一向に下がりませんでした 「どうしたら政宗様の熱が下がるのかしら?」 何度も額の手拭いをかえながらは考えていました すると、ある事を思い出したのです 「たしか…小十郎様にお借りした書物に書いてあった気が…」 は立ち上がると「政宗様お待ち下さいませ」と静かに声を掛けると、自分の部屋へ戻り 小十郎から借りた一冊の書物を持ってきたのです 「えーと……あ、これだわ」 書物にはいろいろな病や怪我等の応急処置法などが記されていました 『水分を摂り安静にすべし』…しかし、その下に書かれていたこと…… は暫く考えた末、意を決したように着物を脱ぎ始めたのでございます 帯を解き、するりと着物を脱ぐと襦袢姿になり政宗の眠っている床に体を滑り込ませたのでした そして、まるで幼子を抱きしめるようにその胸に政宗を抱きしめたのです これこそ政宗の意識があれば狂喜乱舞するに違いないでしょうに… 不運としか言い様がありません が、夢の中で政宗はいい気持ちでおられたのです なんかすごく気持ちいいぜ いい匂いがして…柔らかくて… 死ぬってこんなに気持ちがいいものなのか? ある意味、意識があっても死んでいたかもしれません 意識が戻ってこの事を知ったら政宗はきっと後悔してしまうに違いありません 『なんてこったぃ…せっかくのチャンスを』…と に髪を撫でられ、背中を擦られ、抱きしめられて 政宗は、それこそ幼子の様に静かに眠りについたのでございます 朝、政宗が目を覚ますとそれは驚き以外の表現ができぬほど驚いたのでございます 目の前になにやら柔らかいもの… 「こ、これはっ…?」 これは流石の政宗も驚くというものです 気がつけば、の柔らかい膨らみが目の前にあり、そこに自分の顔が埋められていたのですから… 狂喜乱舞の騒ぎではございません 高熱など屁でも糞でもないのです(下品ですみません/笑) 鼻血を噴くというのはこういうことなのだろうと思うほどでございました これで元気が出ないわけがありません しかし、案の定政宗は深い後悔の念にかられたのでございます 「ちっ、これじゃ食えねぇ」 そういう問題か?という作者の気持ちは置いておきまして、 みるみる顔が緩んでいく政宗でございました 名残惜しそうにの胸から顔を離すと、看病疲れのためかはぐっすりと眠っておりました 政宗は、ふわりとをそっと抱きしめ、髪を撫で、 そして…「これくらいはいいだろ?」と、自分に言い聞かせるように呟くと そっと触れるだけの口付けをしたのでございます(やっぱり手は出すんですね?/作者) 「政宗様、お体の具合は如何ですか?」 その時、襖一枚隔てた向こうから小十郎の声が届いたのでございます 政宗が「ちっ」と軽く舌打ちをしたことは言うまでもありません 「あぁ小十郎か…もう大丈夫だ」 政宗の言葉に安堵した小十郎は「失礼します」と襖を開けたのでございます 「ばっ…開けるなっ!」 政宗の言葉も虚しく、開けられてしまった襖… そこで小十郎が目にしたものは… 「○◆×*●△#?▼\$■♪っっ!!」 思わず言葉にならない声を絞り出すように発した小十郎でございました 「ま、ま、ま、政宗様っ!な、なんということを!!」 小十郎が政宗に疑いの眼を投げかけたのは言うまでもなく、 それを感じた政宗は少しも悪びれておりませんでした (そりゃそうです…食ってはいないのですから…) 「心配するな眠ってるだけだ…それに俺は手は出しちゃいねぇよ(口は出したけどな/にやり」 政宗の意味あり気な不敵な笑みを小十郎が見逃すはずがありません 嘘だ…政宗様は嘘をついておられる 政宗様がこの好機を見逃すはずがない やはり…あの時様をお止めするべきだった…と、小十郎も後悔したのでございます 「政宗様…真でございますな?」 「してねぇって言ってるだろうが」 今ひとつ信じがたいと思いましたが、小十郎は政宗の言葉を信じるしかありませんでした 「なぁ小十郎、は気持ち良かったぜ」 「まっ、政宗様っ!!」 「冗談だ…バーカ!…そんな大声を出すな、が起きるだろーが」 「で、ですが…」 「フン、は添い寝をしただけだ…他意はねぇよ」 言われてみればは男女間に関しては無知…意味を持って政宗の床に入るはずがないのです 小十郎は無防備に眠っているを見ると、枕元に一冊の書物を見つけたのでございます 「これは様にお貸しした…医学書…」 全てを理解した小十郎は「政宗様…残念でしたな」と逆に不敵な笑みを政宗に向けたのでございます 「うるせぇよバーカ」 程なくしては目を覚ますと、床に胡坐をかいて座っている政宗を見て飛び起きたのでございます そして徐に、政宗の額に手を当てるとにっこりと微笑みました 「よかった…お熱は下がりましたね」 「あぁ、お前のお陰だ」 は傍らにいた小十郎にも気づき、「おはようございます」と会釈をして微笑んだのでした そして、襦袢の胸元と裾を整え、着物を羽織り器用に帯を締めると、まるで何事もなかったように 「朝食の支度をして参りますね」とお台所に向かったのでした その後、全ての状況を知った家臣たちが再び本音を洩らし始めたのです 「筆頭、本当に病だったんですかい?」 「ありゃぜったい仮病だぜ」 「でも…いいよなぁ……俺も様に添い寝してもらいてぇ」 「俺たちが病になっても看病すらしてもらえないんじゃねぇの?」 その言葉にニッコリ笑って聞いていたは思わず反撃したのでございます 「何を言うのです!伊達の人間はにとって家族も同然!誰が病になっても看病いたしまする」 「うぉおおおーーーっ!」 の言葉に家臣たちは歓びの声をあげたのでございます きっと、家臣の誰もが次は自分が病になるんだと思ったに違いありません 感嘆の雄叫びをを聞いて面白くなかったのは政宗でございました 「オイ、お前らっ!看病はさせても添い寝はさせねぇからな…憶えとけっ!」 「イ、イエッサー!!」 政宗様ズルイ… 家臣たちの本音はそうであったに違いないのですが、誰一人それを口にすることは出来ませんでした 「…フンッ」と面白くなさそうに軽く舌打ちをしましたが、 が添い寝をしてくれるなら毎日でも病になりてぇと不埒な考えを持った政宗でございました Back タイトルで「おっ!」と思われた方、ご期待に添えなくてすみません。(笑) 書いている本人はイロイロ妄想しながらあ〜んなことやこ〜んなことをと思ったのですが この程度でご勘弁を f(--;) by管理人 |