素材 Abundant Shine 様
俺が物語の主人公だとバルフレアは言った 「じゃあ、私は?」と、聞いたら「物語は自分で創るものだ」と… 「その中にラブストーリーはある?」 「さあな、最終章くらいにはあるかもな」 意味ありげに笑うバルフレアを見ていたら最終章には私がいるだろうか…? そう思った ラブストーリー そう思っても、もしかしたら私は最終章にも出てこないかもしれない もし、出てきたとしても序章からいるフランには敵わない 「ねぇ、フランはバルフレアの事好き?」 「ええ、好きよ」 「バルフレアはフランのこと好き?」 「ああ」 そして、いつも口を揃えて言うのは『最高の相棒』 いいな、そういうのって… 「私もバルフレアの最高の相棒になりたい」 「俺はお前を相棒にするつもりはないね」 「…そんな意地悪を言わなくてもいいじゃない」 「バルフレアは相棒以外のものにしたいんじゃない?」 「おいおいフラン…余計な事は言うなよ」 私には二人が何を言っているのか意味が分からなかった 少ない言葉の中で伝わるなんて…やっぱり羨ましい… すると、フランは「物語は自分でつくるものよ」と優しく微笑んだ 私の物語ねぇ… やっぱり物語といえば『ラブストーリー』がいいに決まってる そして、そこにはやっぱりバルフレアがいて私は彼に恋をするの…な〜んてね どっぷりと自分の世界に浸りきっていた私の額に、気がつくとバルフレアが手を当てていた 「な、な、なに?」 「いや、お前が気持ち悪い顔で笑ってるから熱があるんじゃないかと思ってな」 「き、気持ち悪いって…し、失礼ねっ!…わ、私はただ……」 そう言いかけた時、彼は私の額に当てていた手を口におろしてきて軽く押さえた 「何も言わなくていい…お前の考えている事はだいたい分かる」 そう言ったバルフレアの顔はいつもと様子が違っていて、 微かに見てとれた彼の表情の変化に私は少しドキリとして胸の奥がドクンと波打った 「えっ!?」 「まあ…お前の物語だしな…いいんじゃねぇか?」 バルフレアはの頭を軽くポンとひとつ叩くと仲間たちの方へ行ってしまった 私…口に出してたのかしら? 「ねぇフラン…私、何かとんでもない事を口走ってた?」 「いいえ、何も言ってないわ」 フランは否定してくれたものの、何故かその顔は微笑んでるような気がするんだけどな 「は分かりやすいんだよ」 「ヴァ、ヴァン…」 「うふふ、はバルフレアが好きなのね?」 「なっ…パンネロまでからかって…」 「いいじゃない…少なからずあなたの想いはバルフレアには伝わっているんだから」 そうなのかな…? パンネロに言われて妙に納得しちゃったりして 「でも…素敵ね、誰にも物語があるって…」 パンネロのそっと呟いた言葉に私は気がついたんだ 『物語』って誰にでもあってそれがみんなそれぞれ違うってこと 今、私たちは一緒にいて戦い続けているけど、それぞれ抱えている想いや夢は違う 求めているものは違っていても、物語はあって存在してる みんなにも物語があるように私にも物語がある そして、みんなが主人公なんだ 夜になってバルフレアがいないことに気づいて私は外に出た 「そんなところで何してるの?夜、外に出ると危ないよ」 「誰に言ってるんだ?」 「バルフレアによっ!」 「お前こそ危ないだろ…一応女なんだから気をつけろ」 「大丈夫よ、私にはこれがあるから」 は、バルフレアからもらった銃を掲げると彼に向かって銃口を向けた 「おいおい物騒だな…ま、お前には俺は撃てないだろうけど…な」 「どういう意味よ」 「意味なんか簡単だろ?例え撃てたとしても俺には当たらない…ヘタクソだからな」 意味なんて簡単だと言われた時は正直ドキッとした 私はバルフレアが好きだから撃てない…そう言われると思った そんなはずないのに… 私の想いはバルフレアに伝わっている…パンネロの言った言葉が耳を擽って、 それをかき消す様に首を横に振ると彼に向けていた銃をしまい込んだ すると、バルフレアは「こっちに来いよ」とばかりにクイッと顎をしゃくってを呼んだ ただそれが…それだけなのに心が逸る自分がそこにいた が遠慮がちにバルフレアの隣にちょこんと座ると彼は小さく笑った 「いつもお前を守れるとは限らない…あんまり危ない事はするなよ」 「う、うん…それよりバルフレアはここで何をしていたの?」 「俺?…さあな」 「なにそれ」 「ははっ…俺の物語を読んでいたって言ったら信じるか?」 「うん、信じるよ」 バルフレアは、私の言葉にまた「ははっ」って声を出して笑ったんだ 「お前の物語は進んでるか?」 「もちろん!壮大なロマンがね」 「ぷっ、くくっ…壮大なロマンねぇ」 「おかしい?」 は拗ねたように頬をプッと膨らませると横を向いた 「いや…それはラブストーリーなのか?」 やっぱりバルフレアは私をからかっている そう思った だから、私は言ってやったんだ 「そうよ、壮大なラブロマンスなんだから」…てね てっきりバカにされて笑われると思ったのに… 「ふぅん…で、そこには俺は登場するのか?」 もちろん!って声を大にして言いたかったけど、それはちょっぴり悔しくて… 「さ、さあね…バルフレアはどうなのよ?」 「ん?」 「バルフレアの物語にはラブストーリーは存在するの?」 「…そうだな…それがクライマックスになるかもな」 「え?…へ、へぇ……で、それに私は登場しちゃったりする?」 「さあな」 ねぇバルフレア…あなたのストーリーに私がいなくてもいい だって、あなたのにはいなくても私のストーリーには私たちふたりが存在してるから… 物語は運命に翻弄されて流されているのでも決められているのでもない 自分が選んで、自分で決めて語られていくもの… 「おい、…物語を続けろよ」 「うん」 もちろん、私は自分の物語の主人公としてこのラブストーリーを綴っていく 今日のページには、ほらバルフレアが綴られている BACK |